サイレント映画を観る


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日が暮れて、近くのカフェで本でも読もうと散歩に出掛けた。

いつも気になっているミニシアターがある。

目の前を通る度に上映スケジュールを一通り読むのだが、なかなかここの扉を開けるのには勇気がいる。

今日もこのミニシアターの前を通ってどんなのが上映されているのかと思い足を止めた。

 

ふむふむ20時からサイレント映画上映か。

ほう、ピアノの生演奏付き!?

 

サイレント映画にも興味があるし、そこに今日はピアノの生演奏がつくらしい。

よし、勇気を出して行ってみようではないか。

 

時間まで近くのカフェで読書。

カフェ店内には好きな男の子の話で盛り上がる女子たち、息子と孫の話題で真剣なマダムたち、常連客のカウンターで盛り上がる笑い声、奥の席で肩を寄せあうカップル...

 

それぞれが自分達の時間を楽しんでいる。

 

BGMはOhana

私の好きな永積崇さんの歌声が店内に響き渡る。

 

シーンと静まりかえったカフェで読書するよりも、これくらいの日常音が流れる中のほうがなんとなく読書がすすむ。

 

そして上映時間が近くなり、今まで開けることの出来なかった扉に手を伸ばす....

 

シアター内に入ると人が数人。

 

本日の上映映画は1926-27年のフランスのSF 映画『チャールストン』と、1925年のフランス映画『メニルモンタン』

 

チャールストンは未来(2018年?)が舞台となっている映画らしい。アフリカで文明が発達して、ヨーロッパが廃墟と化した設定で、アフリカ人の飛行士が銀色の球体に乗って廃墟となり未開の地となったパリに降り立ち、白人の女性とゴリラと知り合う。

その彼女がチョークで壁に電話を描くと本物の電話となって、天国の人々と会話が出来る能力を持っているようだ。

映像がスローモーションになったり、早送りになったりと、当時の特撮技法を色々と取り入れていて、30分弱の映画なのだか最後の10分はとにかくチャールストンを踊りまくる!という内容で、ピアノ演奏がなかったら飽きてしまいそうなシーンが続く。

天国の人々達(天使)のチープな描き方もSF映画の元祖『月世界旅行』を感じさせるようなコメディを感じる。

 

2作目のメニルモンタンは、パリ郊外で暮らしていた姉妹が両親を亡くし孤児となり、パリのメニルモンタンに移り住む。妹はそこで男と出逢い恋に落ちる。姉も恋に溺れる妹を心配し、そして嫉妬していた。

妹の幸せも永くは続かない。数日間彼を待ち続け、ようやく姿を表した彼だったが、妹が見たのは彼と姉のツーショットだった。

失恋に心を痛める中、彼の子を身ごもっていた妹は子供を産み、行くあてもなくパリの街をさまよい歩く。

お腹をすかせながら公園のベンチに座り、隣でパンとハムを食べていた老人から、そのパンとハムを差し出されて人の暖かさを感じ、生きていく覚悟からなのか、ボロボロと涙をこぼしながらパンを食べる妹。

日が暮れ夜のメニルモンタン。

遠くに見覚えのあるシルエットを見つけて近づく妹。そこにはあの日以来ずっと会っていなかった姉の姿。彼女も彼に捨てられ娼婦となっていた。久々の再会を喜びそしてお互いを許しあう姉妹。それを偶然にも目にする元彼。

そしてその男は今の彼女と揉め合いになり、撲殺されどこかへ引きずられていく。。。

 

というフランス映画らしいモヤッと感が残るストーリーだった。

 

どちらの作品もサイレント映画

ドビュッシーのような印象主義音楽のピアノの生演奏がさらに映画の世界に引き込む。

サイレントだけでは中々わかりづらい内容も、音楽があるとストーリーが見えてくる。

音楽と映像はお互いがお互いを無くてはならない存在なんだと改めて感じた。

 

ちなみに一作目の『チャールストン』の製作と監督を務めたジャン・ルノワールは、かの有名なフランス印象派画家のピエール=オーギュスト・ルノワールの次男だそうな。

 

そしてなんと今年は〈映画の父〉と呼ばれるリュミエール兄弟が発明したシネマトグラフが日本で初めて上映されて120年という記念すべき年だそうだ。